単語の読みはどのように育つのか ― 動画で学ぶ発達の段階
3人の先生のニュースレターは、こどもの発達や障害、広く保育や教育に関して気になるニュースや最新の研究を取り上げます。川崎・奥村・荻布のそれぞれの専門性を活かしながら子どもの発達支援や教育・社会福祉のエビデンスを深堀し、経験値をエビデンスとして皆様の生活に還元しようとする試みです。根拠の乏しいハウツーとは一線を画して、間違いの少ない情報を届けたい人に届けていくことを目標にしています。

「何度も繰り返し練習すれば、ひらがなは読めるようになる」と思っている人もいるかもしれません。しかし「練習してもなかなか読めるようにならない」「読めるが、遅くてたどたどしい」「一文字ずつは読めるが、言葉の読みは苦手」など、特徴的な読みの状態がある子どもたちがいます。単に練習不足ややる気の問題と捉えられてしまうこともありますが、実は、読みの発達段階のどこかでのつまずきが関わっている場合があります。この記事では、単語の読みがどのように発達していくのかを整理し、「子どもはどのように文字と音を結びつけているのか?」「読みの発達をどう見れば、過剰な心配や見逃しを防げるのか?」という疑問について考えてみます。
読みの発達を3段階で捉える
単語や文の読みは、「かな文字の読みを一文字ずつマスターすれば、自然にできるようになるもの」というイメージを持っている方もいるかもしれません。しかし実際には、子どもは同じ「読む」という行為の中で、使っている手がかりを少しずつ変えながら発達していきます。読みの発達を説明する代表的なモデルとして、Frith は、読みの発達をいくつかの段階として整理しました(Frith, 1986)。まずは、その発達の流れを動画で解説します。
3段階の読みの発達から見えてくること
この3段階の発達を理解することで、子どもの読みを「できる/できない」だけで判断するのではなく、発達段階に基づいて理解する視点を持つことができます。読みは、まとまりとして捉えるロゴ読み段階から始まり、一文字と音を結びつけるアルファベット段階を経て、単語をまとまりとして処理する正書法段階へと進んでいきます。この流れを踏まえると、同じ「読める」に見えても、その中身が異なることが見えてきます。例えば、自分の名前やよく見かける単語は読めるのに、その単語に含まれている文字が別の単語の中に出てきたときに読めない子どもがいます。このような場合、興味を引かれた単語や何度も見たことのある単語を、ロゴやマークのようなひとまとまりとして覚えている、いわゆるロゴ読み段階の読みが先行しており、文字と音の対応が十分に成立していない可能性があります。また、文字をまったく読もうとしない、ロゴ読み段階も十分に形成されていない場合には、文字への興味が弱かったり、文字を記号として捉えることに気づきにくかったり、ことばの意味に注意が向きにくかったりするなど、文字の処理以前の段階に課題がある可能性も考えられます。
一方で、一文字ずつであれば正確に読めるにもかかわらず、単語の読みがうまくできない子どももいます。例えば、文字は正確に読めていても、「くるま」「せんせい」「おかあさん」など馴染みが深い単語であってもなかなかスムーズに読めるようにならず、読みがたどたどしく、間違いが多くなったりします。さらに、文になると負担が大きくなり、読めてはいても内容理解に繋がりにくいこともあります。この場合、文字と音の対応そのものは成立しているものの、単語をまとまりとして捉えて読む力、つまり正書法段階への移行が十分でない状態と考えられます。一文字ずつの処理に依存しているため、まとまりとして読むことが難しくなっているのです。さらに、単語として捉えて読むこと自体はできているものの、その処理が十分に使いこなされておらず、全体として読みの遅さが残る子どももいます。この場合は、正書法段階には到達しているものの、その読みの処理がまだ十分に自動化されていない状態と考えられます。このように整理すると、子どもの読みの状態を観察することで、どの段階でつまずいているのかを見立てることができます。
