ひらがな読みはどのくらいできればいい?― 動画で学ぶ発達と気づきのポイント
3人の先生のニュースレターは、こどもの発達や障害、広く保育や教育に関して気になるニュースや最新の研究を取り上げます。川崎・奥村・荻布のそれぞれの専門性を活かしながら子どもの発達支援や教育・社会福祉のエビデンスを深堀し、経験値をエビデンスとして皆様の生活に還元しようとする試みです。根拠の乏しいハウツーとは一線を画して、間違いの少ない情報を届けたい人に届けていくことを目標にしています。

「何度も繰り返し練習すれば、ひらがなは読めるようになる」と思われることがあります。もちろん、文字に触れる経験や練習は大切です。しかし、子どもがひらがなを読めるようになる過程は、すべての文字を一つ一つ覚えていく単純な積み重ねではありません。就学前の子どもの読みの様子を見ていると、ある時期に急に読める文字が増えて驚くことがあります。一方で、このことばは読めるのに、なぜ別のことばは読めないの?と不思議に感じることもあります。こうした違いには、文字の種類が関係していることがあります。また、子どもがその文字やことばをどれくらい目にしているか、名前や好きなもののように特別な意味をもつことばかどうかなども関わっています。
この記事では、ひらがなの中でも、直音、拗音、促音、長音、拗長音など、文字の種類による読みの育ち方の違いに注目します。どの文字が比較的早く読めるようになり、どの文字が後から安定しやすいのかを整理しながら、「就学前後にどのくらい読めていればよいのか」「どのような読みの状態が支援の手がかりになるのか」について考えてみます。
文字の種類による発達の違い
ひらがなは、一文字ごとに形や音の特徴が異なり、子どもによって読みやすい文字にも違いがあります。しかし全体として見ると、どの文字が比較的早く育ち、どの文字が後から育ちやすいかには、一定の発達的な傾向があります。特に、直音と、拗音・促音・長音・拗長音のような特殊な表記では、発達のしかたに差がみられます。ここでは、まず動画でその全体像を確認してみましょう。
動画で解説したように、就学前の子どもたちのひらがな読みは、生活の中で自然に大きく伸びていきます。また、その育ち方は文字の種類によって異なります(島村, 1994;太田, 2018)。他にも、ひらがな読みの育ちに関わる文字の特徴がいくつかあります。例えば、子どもがどの文字に絵本などでよく目にするかどうか、また五十音表の中で早い位置にある文字かどうかといったことが、読みの習得に関わっている可能性があります。加えて、形の似た文字どうしは混同されやすく、幼児期の読みの安定しにくさに関係することも示唆されています(垣花, 2015;樋口, 2019)。
文字の形の複雑さなど形態的な見やすさ・覚えやすさも影響が大きいのでは?と思われる方も多いかもしれません。しかし、文字の見かけの複雑さは読みの育ちにはあまり影響していないと言われています(樋口, 2019)。一方で、文字の見かけの複雑さはひらがな書きに影響し、読みと書きでは関わる要因が少し異なることが示されています。
また、直音と、拗音や促音、長音などの特殊な表記では、読みに必要な力にも少し違いがあります。直音では、一つの文字と一つの音を対応させることが基本になります。一方で、拗音、促音、長音、拗長音、拗促音では二つ以上の文字で一つの音を表すことを理解し対応させる力が必要です。こうした力の背景には、ことばを音のまとまりとして捉えたり、音を分けたり、つなげたりする力、いわゆる音韻意識が関わっていると考えられます。
〔※書きの育ちについては、また別の記事でお話ししたいと思います。〕
以下の記事も併せて読むと理解が深まります。

