学校生活と読み書きスキルの不思議【アフタートーク動画公開】

おやと子どもと社会をつなぐ発達療育研究会ロゴマーク
定期的に行っている「おやと子どもと社会をつなぐ発達療育研究会」では、わたしたち自身が普段研究や臨床であつかっている事柄をもう一度あらためて勉強しなおし、基本を見直し、知識をアップデートしていくことを一番の趣旨にしています。そしてせっかくなので、より分かりやすいことばで間違いのない理解を多くの方と共有していきたいと思い、その一部を動画配信しています。おもに発達に気になるところのあるお子さんを育てている保護者さんや、発達に気になるところのあるお子さんたちの支援に携わる初学者の方にむけて、というコンセプトですが多くの方にご覧いただいています。
今日はその1つ、すでに配信終了していますが川崎先生が講師で「学校生活と読み書きスキル」をテーマにした回の内容を少し、ご紹介します。

上記イベントは既に終了しています。
【学校で把握されている読み書き困難はどの程度?】
「小学校・中学校で学習面又は行動面で著しい困難を示す児童生徒の割合は8.8%」とする世に知られた文部科学省の調査(2022)があります。そのうち学習面で困難さを示すとされたのは6.5%。誤解されやすいところですがこの6.5%はすべてが学習障害ということではありません。
どうゆうことかというと、この調査は「先生が見て”苦手”と判断した児童生徒の数」であり、必ずしもディスレクシア・ディスグラフィアとはいえません。結果として学習面で苦手さが表面化している児童生徒であり、原因はいろいろで特異的障害に限ったものでもありません。ポイントは学習困難は多様な要因・背景をもった「結果」であり、現場で支援をしようとしたときには必ず「なぜ?」を考えることから始まります。
またこの調査をみるときに注意が必要なのは「表面上の問題がないように”見える”児童生徒はこの数には含まれていない」ということです。ディスレクシア・ディスグラフィアの特性を持っていても、なんとか持てる能力を動員して代償しながら教室で過ごしている児童生徒は、困り感を見逃されてしまっているかもしれません。
【どれくらい書ける、どれくらい読めるのが「普通」なの?】
小学校生活の中ではどれくらい書ける、どれくらい読めるのが「普通」なのでしょうか。大前提には「知っている」→「読める(見てわかる)」→「書き記す」という発達の順序を理解しておく必要があります。読み書きが苦手だから50音表から教える、ではなくて、知っているものをどんどん増やしておくことが大切です。何を読んでいるのかわからないのに「読んで読んで!」とされても、文字へのネガティブなイメージが積み重ねてしまうだけで、文字離れにつながってしまいます。
小学校入学段階では、ひらがな直音の読み正確性の正答率は90%に到達します(島村,1994;太田,2008)。つまりひらがな5つ中2つを読み間違える子どもがいた場合、原因は様々想定されますが「読みは苦手」と判断できます。例えば子ども自身の名前に使われている文字(非常に良く見慣れている文字)ははずして、読めるかどうかの確認してみるとよいかもしれません。特殊音節の読み誤りは、小学校入学後にもしばらくは見られるものです。ある程度、読むことの経験を積んでいくと、小学2年生では読みの流暢性が大幅に伸びてすらすらと読めるようになります。その背景には単に「読む」ということだけではなくて、語彙力の伸びが大きく関与してきます。
ひらがな一文字の書きは、小学校入学段階では60%程度の正答率で、小学1年生1学期ではまだまだ個人差が大きいものです。特殊音節の書字まで含めると1年生の間でおおよそ90%ほどです(竹下,017)。
また読み書きを評価するときには、集団の中での比較はもちろん重要ですが、個人の能力のなかでの比較も重要です。「検査の基準値のー2SDを下回ったからこの子の〇〇は問題がある」というのも間違いではありませんが、例えば潜在的能力が非常に高い児童がいたときに読み書き能力が同年齢集団の平均値だった場合には「自分は(自分の色々なスキルのなかで)読み書きが苦手だ」と感じていても何ら不思議ではありません。個人の困難さの認知の実態によっても、アセスメントや支援の方法、タイミングは変わっていきます。支援は障害名に対して行うのではなく、困難さに対して行っていくものなのです。
【まだまだ気になる、学校生活と読み書きスキルの関係…】
続きは、もう1テーマ(頑張れば書けるのか?読めるのか?)と、配信動画よりもさらにざっくばらんな3人の本音が駄々洩れのアフタートーク動画です。