誤解だらけの「算数障害」 理解編(後編)―多様なつまずきと、支援を妨げる言葉の危うさ―

算数の躓きの向こう側 その見立ては誰にとって有益なのか?支援と理解を深めていきます。(川崎)
川﨑・奥村・荻布 2025.11.12
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お待たせしました。算数障害の後編です。前編では算数障害の背景を整理していきました。今回は困難さの内実に即して、どのような支援と理解が求められるのかをさらに掘り下げていきたいと思います。

***

はじめに:「反復すればできる」「試行錯誤が最良」──その“神話”の限界

 前半では算数の躓きが様々な理由で、様々な段階で生じている事を明らかにしました。実態を明らかにせず思い込みで走ってしまい、ポイントがズレた指導はこちらが見込んだ効果がないだけでなく、マイナスに作用しかねません。本人も教える側も(最後にお話ししますね)

 よく「算数は、練習すればできるようになる」「失敗から学べば自然と身につく」「とにかくやらせてみる。それが一番」といわれることが少なくありません。これらは一部真実ですが、一部は大いなる誤解と過剰(無茶)な知見のあてはめの産物による偏見といっても過言ではありません。算数に限ったことではありませんが、少々乱暴に申し上げますと、いま「良い」とされている指導法は全体の6割の人にとって効率的な方法と考えておきましょう。ここで問題になるのは、残りの4割のうち半数の2割は別の方法でも同様の効果を得ることができる一群であり、残りの2割は既存の方法だと思った効果が得られない、もしくは著しく効果が下がる(結果として労力に見合った効果が得られない)群であるということです。この2割の群は「氷山モデル」として学習の困り感だけが周囲に顔をのぞかせます。ただ海の下に隠れた部分は見えません。周囲の大人がここをどれだけ忠実に描き出せるかで、その後の経過は大きく変わります。

 算数にかかわらず学習面はスポーツ以上に「努力と練習でなんとかなる」と言われやすい傾向にあります。さらに「失敗から努力を尽くして立ち上がるストーリー」が好まれる傾向にあります。この傾向は危険で、学び方特徴的な児童・生徒にとってよろしくない方向に作用しかねません。集団と合わせることを道徳観で押し切り続けてきた日本の学校教育全般の傾向といえます。

 認知能力に個人内差がある・ない、にかかわらず、一人ひとりにあった「学び方」が存在します。努力や反復練習が不要ではありません。非効率的な努力や反復練習を強いると、当該の学習だけでなく学習意欲や関係性にも悪影響を及ぼすことが明らかになっています。

 反復!努力の前に「詰まっている場所」を見極める。そうした「つまずきの位置」(目に見えない氷山の海に隠れた部分)を丁寧に見つけ出すことこそが、支援の第一歩になります。そのうえで反復練習や努力を費やす。

 このような処理の詰まりのことを、ここでは「認知的ボトルネック」と呼ぶことがあります。その名称はともかく「(つまりの)首根っこをつかむ」視点をもちましょう。本稿では、そのボトルネック=つまずきポイントのタイプ別整理と、実際の支援方略を提案します。

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