「知っていることば」が読みやすさを変える―単語属性と語彙の関係から考える「読むこと」―
3人の先生のニュースレターは、こどもの発達や障害、広く保育や教育に関して気になるニュースや最新の研究を取り上げます。川崎・奥村・荻布のそれぞれの専門性を活かしながら子どもの発達支援や教育・社会福祉のエビデンスを深堀し、経験値をエビデンスとして皆様の生活に還元しようとする試みです。根拠の乏しいハウツーとは一線を画して、間違いの少ない情報を届けたい人に届けていくことを目標にしています。

「読みやすい単語」は、誰にとっても読みやすいのか。
ここまでの奥村先生、川崎先生のLetterでは、親密度や頻度、心像性など、単語そのものがもつさまざまな性質が、読みやすさに関わることが紹介されてきました。では、こうした単語属性の効果は、誰にとっても同じように現れるのでしょうか。
「読みやすい単語」といわれると、誰にとっても読みやすい、というふうに思えます。…それは本当でしょうか?単語自体がもっている性質は同じだとしても、実際にそれを読む人が、
そのことばについてどのような知識を持っているかによって、その読みやすさの感じられ方や処理のしやすさは変わってきます。
今回、注目したいのは、読み手のもつ語彙知識です。語彙というと、「知っている単語が多いか少ないか」を思い浮かべるかもしれません。しかし、ことばを知っているというのは、単にそのことばの意味を知っているということだけではありません。そのことばの音を知っている、意味を知っている、どのように書くかを知っている、どんな場面で使うかを知っている、似た意味のことばや反対の意味のことばとの関係を知っている、といった様々な側面があります。
つまり、同じ単語属性をもつ単語であっても、読み手の語彙知識のあり方によって、その属性が読みを助ける程度は変わるかもしれません。ある単語属性が強い手がかりになる人もいれば、それほど助けにならない人もいます。単語の性質と語彙知識は、別々に働くのではなく、組み合わさることで読みやすさにつながっていると考えることができます。
では、そもそも「ことばを知っている」とは、何を知っていることなのでしょうか。つぎに語彙知識の中身をもう少し詳しく見ていこうと思います。